■太平洋戦争従軍記  中島平四郎の記録■
(感想文の代筆)

 済南市へ転属して身の廻り品を整理していると、小隊長の立派な個室へ呼び出されたことがあった。
 「感想文を書け!」
 「自分のでありますか!?」
 「馬鹿者!わしのじゃ!」
 「はい!」
 当時、小隊長などが転任していくと、新任地の感想を書いて中隊長などの上官に提出しなければならなかったようである。二等兵は上官の命令に絶対服従である。

 それから二日間、朝から小隊長の部屋に行って缶詰になっていた。他の新兵達は、肉体労働や演習で苦しんでいるのに、私は、小隊長付きの伍長が食事やお茶の世話までしてくれるなか、感想文をひねっていた。
 ようやく、原稿用紙で二〜三枚の感想文を書き上げ、小隊長に差し出したところ、あとでまた呼び出された。
 「中隊長どのは喜んでおられたぞ!」
 「そうでありますか!」
で、一件落着。
 
 (長男記述)
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■太平洋戦争従軍記  中島平四郎の記録■