<りんご市場> 青森県弘前市 2006年 9月16日撮影
弘前市の国道7号線沿いには広大な敷地を持つ総合地方卸売市場「弘果弘前中央青果株式会社」があります。
早生りんごが収穫の最盛期ということで、16日は「サンつがる」を中心に34,900箱の入荷があったそうです。
10月のりんご収穫最盛期には200,000箱以上入荷するそうです。今日の6倍以上のりんご箱で溢れるということです。
懐かしいりんごの木箱で一杯でした。
市場の見学は事前に電話して確認しておいたのですが、今回は担当の方が広い構内を案内してくださいました。多謝。
  参考ページ → 弘果弘前中央青果株式会社会社案内施設見学
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第2卸売市場(6311平方メートル)の競りは半分終わった頃でした。
「つがる」と「サンつがる」。
屋内市場に入りきらないりんご箱が駐車場に並べられています。
競りは2つのグループで行われていました。30分で全て競り落とされました。
「黄王」と「サンつがる」。
第3卸売場(4783平方メートル)はりんご箱で満杯。
次から次へと競り落とされていきます。
競り落とされたりんごはどんどん運び出されていきます。
りんご豆知識
青森県のりんごは、1875年に最初の苗木3本が植えられてから、様々な苦難を乗り越えてきました。
苦難その一、植物としての「病気」と「害虫」の発生。
モニリア病、りんご赤星病、斑点性落葉病、黒星病、りんご腐らん病、斑点落葉病、高接病とたくさんの病気の発生、ゾウムシ、綿虫、シンクイ虫、尺取虫の大発生。
苦難その二過酷な気象
大雪による幹の裂開、霜害、ひょう害、水害などで樹体を痛めつけられ、台風や強風によって収穫間近の落果
記憶に新しいところでは、1991年9月28日の台風19号は青森市で観測史上最高の最大瞬間風速53.9m/sを記録し、大量の落果があり、全国からりんご農家支援の手が差しのべられました。
苦難その三嗜好果物との競合
ミカンイチゴの増産、バナナの輸入増、リンゴ果汁輸入自由化、オレンジ輸入自由化、りんご輸入相手国の拡大など、競争相手の勃興。
対策その一、手間を惜しまない。
手間をかけることによって消費者の選好に合った商品を生産。開花から収穫までの間に、りんご農家は樹上の実に数回触れることになる。
実すぐり(摘果):大きく、良い形になる中心果を残し、側果をつみ取る。実と実がぶつかって擦れないよう適度な間隔を空ける。
袋かけ、袋はぎ:病害虫から実を守る。着色を良くする。袋をかけて育ったりんごは貯蔵性が良い。陸奥という品種は、袋をかけずに育てると黄緑の実(”青い”と見る人もいる)となり、袋をかけて収穫直前に袋を除いて日光浴をさせると鮮やかな朱色の実となる。
葉とり:実の回りの葉を摘み、実に太陽が良く当たるようにして着色を促進する。ただし、植物にとっては葉が多いほうが光合成も十分できるので、甘い実を作ることができる。最近では、「葉とらずりんご」と称して見た目は悪くとも糖度・栄養分が多いりんごとして売り出している。
玉まわし:実の各面を太陽に向けてまんべんなく着色させる。
対策その二、豊富な品揃え
夏緑、祝(いわい)、黄王(きおう)、未希ライフ(みきらいふ)、つがる、彩香(さいか)、千秋(せんしゅう)、紅玉(こうぎょく)、スターキング・デリシャス、世界一、ジョナゴールド、北斗、陸奥(むつ)、シナノゴールド、王林(おうりん)、ふじ、金星(きんせい)などたくさんの品種が栽培されています。私の子供の頃には国光(こっこう)という名のりんごがあったと記憶しています。品種開発は、@消費者の嗜好の多様化、A病害虫への強健性、B流通販売過程での日持ちの良さ、などを狙いにしているようです。
りんごの授粉
りんごは同じ品種の花粉では実がならないので、他の品種が側に植わっている必要があります。
昔は耳かきの綿毛のような道具で花粉を付けて回る様子が報道されていましたが、昭和50年代からマメコバチという蜂を使って授粉させる方法が普及しています。
津軽地方では、りんごの花が咲く頃は学校が休みになったそうです。
昭和40年には天候不順で花が一斉に咲いたため、中学生や高校生、自衛隊員を動員して授粉作業をしたそうです。
むかし人工授粉をやっていたという人に手順を聞きました。
まずりんごの花を採ってきます。1つの株に5つくらいの花が咲くので、真ん中の花以外の側花を集めます。小さな目の網に花を擦りつけて雄しべの葯(ヤク)だけを集め、りんご箱の中で電球を付けて暖めると、翌日には葯がはじけて花粉が出てきます。集まったりんごの花粉に石松子(せきしょうし:ヒカゲノカズラの胞子)という増量剤を加えて準備完了。石松子は赤く着色されているので授粉済みの花の目印ともなります。
木守りんご (きもりりんご)
果樹の枝の高いところに実を1つ残す風習。幸魂(さちだま)信仰の流れ。
「全部取ってしまうと、来年は実がならない」次の新生を促す種として残していると思われる。生命の再生を願い、豊作を祈る。自然の営みの中で収穫させてもらっていることへの畏敬の念。鳥や虫などと自然の恵みを分かち合う心の顕れとも。
「木守(きまもり)」「木(こ)もり」「木まぶり」とも言われる。柿や柚でも見られる。
『富士見ゆる村の寧しや木守柿   角川源義』
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